パラグライダーとは

ようこそパラグライダーの世界へ

パラグライダーとは、人類が手にした最も手軽で最もシンプルな翼です。

動力を使う事無く、大空を鳥のように高く、自由に飛べる魔法のような道具です。
大空を自由に飛びたい、そんな夢を現実の事にしてくれる翼、パラグライダー。

ここでは、いくつかの項目に分けてパラグライダーについて学びましょう。

パラグライダーの歴史

パラグライダーは元々、1970年代にフランスの登山家が山からの下山方法として

日本にパラグライダーが入ってきたのは1985年頃で、一部の輸入業者や愛好家が独自に山や海岸などからテスト飛行を繰り返していました。 その頃のパラグライダーは、まだまだ「グライダー」などと呼べる性能は無く、スキー場の上級者コースのかなりの急斜面を上から下まで走っても少ししか浮きませんでした。 どうしたら高く飛べるのだろう?試行錯誤しながら、かなりの強風で試してみたり、崖の様なところから飛び出してみたり、車で引っ張ってみたり、今考えればかなり危険なことをやっていたように思います。実際私も、強風で後の山に飛ばされたりしました。 教えてくれる人が誰もいないわけですから、どうやったら上手くいくのか自分で考えてやってみるしか無かったのです。

そのような時代を経て、1987年には「第1回パラグライダー教員研修検定会」が長野県の木島平スキー場で開催されました。 全国各地からスキー場関係者、パラグライダー輸入業者、ハンググライダー・パラグライダースクール経営者などが一同に集まり、パラグライダーに関する理論と飛行技術、指導法などを学んだのです。 こうして1987年に「パラグライダー教員」が全国各地に誕生したのです。

日本における本格的なパラグライダーの幕開けです。

全国各地にパラグライダー教員が誕生してからは、全国各地のスキー場を中心にパラグライダースクールが数多く誕生しました。 初期のパラグライダースクールでは、レジャー志向の方は少なく、登山愛好家が多かったように思います。 自分で登った山から飛んで見たい、そんな想いがきっかけだったのでしょう。

1988年にはNHKで「パラグライダー講座」が放映された事をきっかけに「パラグライダーブーム」が起きました。 パラグライダースクールには毎週末50名を越える体験受講者が集まり、大いに賑わっていました。 受講者の半数以上は若い女性で、初期の頃とは体験者の客層もだいぶ変化してきました。

現在、修学旅行のパラグライダー体験を除けば、毎週末に50人以上の体験受講者が集まるスクールはおそらく無いでしょう。当時はまさに「パラグライダーブーム」が起きていたのです。 この頃になると、パラグライダー自体の性能も高くなり、指導者の指導方法もある程度確立され、体験受講者が簡単に飛べる環境が整ってきました。 上昇気流を利用した長時間フライトや長距離フライトが可能になったのもこの頃です。 このこともパラグライダーブームが起きた要因の一つと考えられます。

そして時代は流れ、ブームは去りスクールやパラグライダーエリアは淘汰されました。

現在あるスクールはプロフェッショナルなスクールであると考えて良いでしょう。 また、パラグライダーの飛行性能と安全性はさらに飛躍的に向上し、簡単に長時間フライトが可能になりました。 上昇気流に乗って高く、遠くにも飛べるようになりました。 テレビや雑誌でも取り上げられ、レジャースポーツとして広く認知されるようになりました。 初期のパラグライダースクールの1日体験に参加したけれど、なかなか飛べなくて諦めてしまった方、自分のパラグライダーを買ったけれども、あまり飛ばなくてやめてしまった方も多いことでしょう。 しかし「飛びたい」という気持ちが少しでもあれば、パラグライダーが飛躍的に進化したこの時代に、再びパラグライダーにチャレンジしていただきたいと思います。 当時とは全く違うパラグライダーが今日にはあるからです。

パラグライダーの魅力

パラグライダーの最大の魅力、それは手軽に空を飛べることでしょう。

我々人類が長い間想い描いていた大空への夢を比較的簡単に叶えてくれる翼がパラグライダーなのです。 パラグライダーが登場する前は、「ハンググライダー」が最も手軽な翼でした。 しかしハンググライダーの機材は重く、骨組みが入っているために結構な大きさ(長さ)で自宅に保管できない場合も多く、保管できたとしてもフライトに行く際は、専用のキャリアなどを自作して車に積まなければなりませんでした。

また、飛べるようになるまでに時間がかかり、あきらめてしまった方も多いのではないでしょうか。しかしパラグライダーが登場してからは、信じられないくらい手軽に空を飛ぶことができるようになったのです。 

初心者が半日から一日で低い丘から飛べるのです。5日から7日練習すれば高い山からも飛べるのです。 さらに半年ほど練習すれば、上昇気流を捕らえて長時間飛ぶことができるのです。 こんなに短期間空を飛べるようになる物は他に無いでしょう。 機材も軽く、コンパクトにたためる為、自宅にも保管できます。車にも乗ります。電車にも乗れます。 この手軽さがパラグライダーの最大の魅力なのです。

初期のパラグライダーは滑空性能が悪く、高いところから降りるだけでしたが、今日のパラグライダーは違います。

飛躍的な滑空性能の向上で、上昇気流を捕らえて何百、何千mも上昇できるようになったのです。とんびと一緒に上昇気流の中で旋回したり、雲のすぐ下まで行けるようになったのです。 普段見ることのできない高い所からの景色を眺めることもできます。 何十キロも遠く離れた町に飛んでいけたりもします。 こんなすごい体験ができるスポーツは他にはないでしょう。 あなたも空にぽっかりと浮かんだ雲まで行って見たいと思いませんか?

たとえ毎日飛んだとしても、一日として同じ条件はありません。今日の風は? 今日の上昇気流は? 目には見えない自然の風を想像しながらのフライトは飽きることがありません。 私は24年間パラグライダーで飛んでいますが、全く飽きません。今日はどんな風が吹くだろう? どんな飛びができるだろう?  子供のようにわくわくした気持ちで毎回毎回新たなフライトに臨んでいるのです。

パラグライダーの装備

ここではパラグライダーに必要な装備を紹介します。

キャノピー(パラグライダー本体)

キャノピーはパラグライダー専用に開発された特殊なナイロンと、
ケブラーやダイニーマなどの素材からできたライン(紐)からできています。

パラグライダーのキャノピーには初心者用から競技用まで様々なタイプの物があります。
自分の技量や目的に合った物を購入しないと安全性を損なう事になります。
初めて購入するパラグライダーはスクールの指導者が選ぶ場合がほとんどでしょう。
サイズはXSからXLまであり、体重に合わせてサイズを選びます。
アウトドアで行うスポーツですのでキャノピーは紫外線で劣化します。
寿命は耐光300時間と言われていますが、毎週末飛んだとして3年程度は適切な性能を維持すると考えられます。

ハーネス

ハーネスとは簡単に言えば「パラグライダーで空を飛ぶ時のイス」です。
飛ぶ時はハーネスに身を包み、ハーネスに座ってパラグライダーを操作します。
ハーネスは人間とパラグライダーをつなぐ物とも言えるでしょう。
ハーネスにも初心者用から競技者用まであります。
初心者用ハーネスは安定性、安全性を重点に設計されています。
競技者用ハーネスは空気抵抗が少なくなるように設計されています。
ハーネスにもサイズがあり、身長や体型によって選ぶことができます。
ハーネスの寿命はキャノピーより長く、5年程度は使えるでしょう。

カラビナ

カラビナとは、ハーネスとキャノピーを連結する金具です。
初期の時代にはパラグライダー専用のカラビナは無く、登山用などのカラビナを使用していましたが、現在では専用のカラビナを使います。

最近はハーネスに付属している場合が多く、別々に購入することが少なくなりましたが、カラビナにも寿命がありますので3年程度で交換することをお薦めいたします。

レスキューパラシュート

レスキューパラシュートとは緊急時に使う予備のパラシュートです。通常の飛行状態では使うことはありません。
パラグライダー同士が空中衝突した場合などに使用します。20年前、レスキューパラシュートを装着しているフライヤーはごく僅かでしたが、現在では高高度飛行をする場合には装着が義務付けられています。

レスキューパラシュートは150日に一度レスキューパラシュートをメンテナンスする資格を持ったレスキューパラシュートリガーによりリパックされなければなりません。レスキューパラシュートも紫外線により劣化します。通常の使用で8年から10年で交換します。

ヘルメット

ヘルメットはパラグライダー専用の物を使います。軽くて衝撃に強く、視界を妨げない設計になっています。
空中での平衡感覚を妨げないように耳の部分に穴が開いています。ヘルメットには頭部全体を保護するフルフェイスタイプと自転車などでよく見るハーフタイプがありますが、フルフェイスタイプをお薦めいたします。
ヘルメットにも寿命があり、5年程度での交換をお薦めします。
ヘルメットはステッカーなどで個性をアピールするアイテムでもあります。

パラグライダーシューズ

パラグライダーをする際には専用のシューズを使います。
足首部分が補強されており、怪我をしにくい設計になっています。

また、靴紐を通す部分がフックではなく、リングになっており、パラグライダーのラインを引っ掛けることがありません。
価格は3万円から4万円しますが丈夫で長持ち、安全ということで安い買い物と言えるでしょう。

アルチバリオメーター(高度計・昇降計)

アルチバリオメーターはパラグライダーで飛行している空域の気流の状態を音で教えてくれる大変便利な計器です。
上昇気流、下降気流を教えてくれるので長時間飛行には欠かせない道具です。
また飛行中の安全確保にも欠かせません。

飛行中の高度も教えてくれるので海抜何mを飛行しているのか、又地上から何mを飛行しているのか一目でわかります。
大変便利な計器ですが、経験からして計器に頼りすぎるのもいけません。
たまには計器無しでフライトすることをお勧めいたします。
気流のにおいや温度、地上から巻き上げられてくる蝶やごみ、風の音の変化などを頼りにフライトしてみよう。

GPS

GPSは簡単に言えば、カーナビと同じものと考えて良いでしょう。飛行中の現在位置を座標で示してくれます。
任意のポイントをGPSに記録させ、そのポイントまでの距離や必要な滑空比などをリアルタイムで教えてくれます。
また、移動速度も一目でわかりますので風の強さや風向きもおおよそ判ります。
人間の感覚では判断できない部分を補ってくれる大変便利な計器です。パラグライダーの性能が飛躍的に向上した現在、パラグライダーのフライトには欠かせない計器です。安全上最も大切な計器といえましょう。

近年は前述のバリオメーターとGPSがひとつになった物が出回っており、正確な風向風速、上昇気流の位置なども表示されるようになり、さらに安全に便利になりました。飛行中の空域の風向風速がわかるという点、進行方向の方位がわかるという点を考えればGPS無しのフライトは考えられません。パラグライダーは飛行速度が遅く風に大変弱い飛行機なのですから。
バリオは無くてもいいですが安全上GPSは必要です。また楽しみの一つとしてGPSに記録されたフライトデータをパソコンで管理することもできますし、グーグルアース上にフライト軌跡をダウンロードする事も可能です。

無線機(トランシーバー)

パラグライダーで使用する無線機は「特定小電力トランシーバー」もしくはスカイレジャー用簡易業務線」のどちらかになります。
スクールによってまちまちです。どちらの無線機も資格は必要ありませんが、「スカイレジャー用簡易業務無線」は届出による免許状が必要です。10年ほど前までは「アマチュア無線」を使用するスクールもありましたが、業務使用では違法行為となるために現在では使われておりません。
将来的にはスカイレジャー用無線が主流になるでしょう。

ヘッドセット

へルメットの中に無線用スピーカーやマイクを装着して、飛行中に無線の指示が確実に聞こえるようにします。

緊急時はヘッドセットで無い場合には無線の指示が聞こえません。
安全管理上必要なアイテムです。

ツリーランセット

緊急的に木の上に不時着した場合に使う道具です。
緊急時以外は使用しませんが、時々使い方を練習しておく必要があります。

ロープ、シュリンゲ、カラビナ、ホイッスル、エイト環などでセットになっています。

フライトスーツ

フライトするときに着るウエアで、ほとんどがつなぎタイプとなります。
つなぎの方が内部に風が入りにくいからでしょう。

防寒保温対策としても必要ですが、疲労軽減、安全対策としても役立ちます。
1着持っていると非常に便利です。
色やデザインで個性をアピールしよう。 

フライトグローブ

パラグライダーでのフライトには安全上手袋が必要です。
体験では軍手でかまいませが、本格的に始めたら薄手の丈夫な皮手袋が良いと思います。

冬はもちろん春や秋には防寒手袋が必要す。
手が冷えてかじかんでしまえば正しい操作ができなくなります。

パラグライダーに必要な装備は以上で大体紹介しましたが、フライトするにあたっては水や簡単な食料、携帯電話は必要です。
またカメラなどは上空からの景色を撮影するのにあった方が良いでしょう。海岸でフライトする場合には万一に備え、ライフジャケットも必要でしょう。
装備全体の重さは17kg前後になりますが、近年は軽量化された道具が開発され、全体で12kg程度に抑えることも可能になりました。

パラグライダーの競技会

「パラグライダーに大会はあるのですか?」

と私はよく聞かれます。 私は「ありますよ、日本選手権や世界選手権もありますよ」 と答えます。

すると大体の方は「滞空時間を競うのですか?」 若しくは「着地の精度を競うのですか?」と再び聞いてきます。

その反応は正しいと思います。 実際にそのような競技が行われてきたからです。

ここではパラグライダーの競技の内容、時代によるその内容の変化を紹介します。

ターゲット

これは目標地点にいかに精度良く着地できるかを競う競技です。 パラグライダーの滑空性能が悪かった20年以上前には良く行われていました。 パラグライダーの滑空性能向上と共に行われなくなりましたが、現在は「アキュラシー」競技として復活し、日本選手権、世界選手権も行われています。 滑空性能の良いグライダーでは精度良く着地するのは難しい為、この競技では初級者用グライダーを使います。 日本選手権ともなると、目標地点から10センチ以内に着地するフライトを何本も続けないと上位に入賞することはできません。

デュアレーション

これは離陸してから着陸するまでの滞空時間の長さを競う競技です。 これも20年以上前には良く行われていましたが、現在は行われていません。 滞空することが難しい時代には競技として成り立っていましたが、現在のパラグライダーを使い、上昇気流の発生している条件でこの競技をやったら、いつまでも滞空するパラグライダーが続出することになり、競技にならないからです。

セットタイム

この競技は大会主催者側があらかじめ定めた滞空時間にいかに近い時間滞空するかを競う競技です。 デュアレーションをやってしまうといつまでも飛んでしまうため、滞空時間を定めたものと考えられますが、時間ぎりぎりまで飛んで、あと何秒というところで強引に降ろすパイロットが出てくるめ、やはり現在では行われていません。 しかし、ローカルな大会では安全ルールを定めて現在でも行われる場合があります。 上昇気流の条件と滞空時間の設定を考えて行う必要があるでしょう。

シークレットパイロン

これは大会主催者側が、文字などを記したパイロン(目標物)をフライト会場の数箇所にあらかじめ用意しておき、パイロットは競技フライト中にそのパイロンの上空まで飛行してその文字を読み取るという競技です。

フライト終了後に、どこのポイントに何の文字があったかを申告します。 遠くのパイロンは300点近くのパイロンは100点などと設定される場合が多いです。 1回のフライトの中で多くのパイロンを正しく読めたパイロットが勝ちです。 上昇気流を上手く使わないと多くのパイロンは読めません。

この競技は今もローカルではやっても良いと思いますが、準備が大変なこと、高度が高いと文字が読めないこと、パラグライダーの飛行の範囲が広がったことなどから行われなくなりました。 ここまでに紹介した4つの競技は「セットタイム&ターゲット」「デュアレーション&ターゲット」「セットタイム&シークレットパイロン&ターゲット」のように、ターゲット競技と組み合わせて行われる事が多く、パラグライダーにとって「いかに安全に精度良く着地するか」は大切な部分ということが伺えます。

時代と共に行われなくなったターゲット競技がアキュラシー競技として復活した理由もそのへんにあるのではないでしょうか。

ここからは現在行われているパラグライダー競技の内容を紹介します。

パイロンレース

現在行われているパラグライダーの競技は、ほとんどこのパイロンレースです。 これはその日の気象条件に合わせて設定されたいくつかのパイロン(目標地点)を決められた順番どおりにできるだけ速く周り、ゴールするという競技です。 上昇気流の条件がよければ50kmから70km、条件があまり良くなくても20kmから30kmの距離のレースとなります。

トップクラスは50kmの距離を2時間を切るタイムでフライトします。平均時速25km以上出ているわけです。上昇している時間も含めてですので、直線滑空している時は時速50kmは出ているでしょう。競技用グライダーだからなせる業です。 パイロンに行ってきたかどうかは、パイロットが装備しているGPSで判断します。

あらかじめスタート前に地上でGPSにパイロンの座標と飛行コース(タスク)のルートを入力しておきます。 パイロン上空に到達するとGPSがパイロンに到達したことを教えてくれるのです。 そして次に向かうべきパイロンまでの距離や方向を教えてくれるのです。要はGPSのナビゲーション通りにゴールまでフライトできればOKというわけです。 言葉で言うと簡単そうですが、効率よく上昇気流を捕らえて素早く上昇し、効率の良いコース取りでパイロン間を移動し、何十kmにも及ぶタスクをゴールするには、経験と判断力が必要になります。

刻々と変化する飛行空域全体の風をフライト中にイメージして、その都度適切な判断をしなければなかなかゴールにはたどり着けません。 そしてゴールした選手の中でもスタートからの時間が短い選手が上位に来るわけです。 ゴールできなかった場合には飛行したポイントまでの距離得点が与えられます。

パイロンレースのスタートの方式は2種類あります。

一つは「エラップスタイムレーストゥゴール」といって、一人一人のスタートの時刻が異なります。 自分の好きなタイミングでスタートを切ることができますが、早くスタートして早くゴールした選手に高得点が与えられます。 もう一つは「レーストゥゴール」といい、すべての選手が同時刻にスタートとなります。 この場合、先にゴールに帰ってきた選手の勝ちとなります。 簡単に言えば運動会の「よーいドン!」と同じです。

いずれの場合もスタートはすべて空中からのスタートとなります。 「エラップスタイムレース」の場合、あらかじめ設定された空域に入った時刻、若しくは空域から出た時刻がスタート時刻となります。 「レース」の場合は決められたスタート時刻に全員の時計が回り始めますので、スタート時刻までには、できるだけスタートの空域に近い場所、且つできるだけ高い高度で待機する必要があります。 スタート時刻を過ぎれば、まだスタートを切れていない選手がいたとしても全員同じ時刻からのスタートとなります。

スタートの時刻もパイロンの通過確認もゴールの時刻も選手のGPSに記録されたデータで計測します。

以前に比べて大変便利になったと共に、参加選手も安全に競技フライトを行える様になりました。 パイロンレースにGPSを使用する以前には、選手はカメラを持ち、パイロン通過の証明として、上空からパイロンを撮影しなければなりませんでした。これが結構難しいのです。

そしてフライト後には自分で撮影したフィルムを現像していました。現像に失敗すれば終わりです。0点です。

ゴールする場合もゴール役員にゼッケンナンバーが見えるように低くゴールしなければならず、高度があまった場合などは強引に高度を落としていました。 GPSの登場で大会役員の負担も減り、選手はフライトに集中できる様になったのです。

現在日本国内では多くの大会が開催されています。

ローカルな大会から世界選手権を目指す本格的な大会まで様々ですが、大会に参加すると、普段のホームエリアでは味わえない楽しさがあります。 多くの選手と共に協力し合ってフライトすると、普段では考えられない距離を飛べたりします。 普段味わえない景色を見ることもできます。フライヤー同士の交流もあります。 そして何より、「どうすればゴールできるのだろう?」と常に考えながらフライトすることによって自信の経験や判断力に磨きがかかるのです。 自分より優れたパイロットと飛ぶことにより学習することができるのです。

大会というと敷居が高く感じられるパイロットも多いと思いますが、経験が少ないパイロットのクラス分けもありますので、気軽に参加できるようになっています。
今よりもっとパラグライダーを楽しみたい方、もっとパラグライダーが上達したい方は大会に参加してみてはいかがでしょうか?

パラグライダーで飛ぶことのリスク

さて、今まではパラグライダーの楽しさや手軽さ、素晴らしさを書いてきましたが

ここではパラグライダーで飛ぶことのリスクについても書きたいと思います。 パラグライダーで空を飛ぶ=危ない、落ちたらどうするの、という方もいらっしゃることでしょう。 多分その方は、新聞でパラグライダーの事故の記事を読んだか、知人がパラグライダーをやっていて怪我をしたか、テレビの特番でパラグライダーで墜落するシーンを見たのか、パラグライダーは落ちるもの、というイメージがあるのでしょう。

空を飛ぶ物ですから、絶対墜落しないとは言えないかもしれません。 強風で飛んだり、風が悪いのに飛んだりすれば、風に流されて木に引っかかったり着地で痛い思いをするかもしれません。しかし、通常は、いきなり墜落したり、失速したりする物ではありません。 これは100パーセント断言できます。そんなに危ない物なら私はやっていませんし、皆様にパラグライダーを薦めたりはしません。 では、パラグライダーにおいて、どういった場合に事故に繋がるのでしょう。 私の経験を元にいくつかあげて見ましょう。

1

パイロット証を取得してからまもなくは怪我をしやすい

これは、パイロット証をもらい、他のエリアに飛びに行き、慣れていないエリアにもかかわらず、強風で無理をして飛んで怪我をするというパターンです。 完全に謙虚さが足りない人のパターンです。自分の技術以上の風で飛んだり、ソアリングする事ばかり考えている人は怪我をしやすい人と言えるでしょう。 パイロットを取ってようやく初心者ということを忘れてはいけません。 パイロット証を取得してもスクールに通ってくれる方は大丈夫ですが、すぐ他のエリアに飛びに行ったりする人は要注意です。謙虚さが足りません。

2

他人の言うことを聞かない人は怪我をする

過去にあった話ですが、風が悪くなったのでインストラクターが下山命令を出したのにもかかわらず、飛んでしまい、着陸で骨折したパイロットがいました。 指示に従っていれば怪我をすることはありませんでした。後悔しても遅いです。他人の言うことを素直に聞けない人は要注意です。 特に毎日風を見ているインストラクターの指示は聞くものです。

3

自分の技量に適切でないパラグライダーに乗っているパターン

スクールを離れて、クラブエリアなどでフライトする方に多いです。 自分の技量以上のグライダーに乗ることは、テイクオフとランディングで怪我をするリスクが格段に高まります。 空中ではなんとかなるでしょう。しかし地上付近でコントロールを失うと怪我に直結します。 自分の所属スクールから機材を購入すれば、こんなことにはなりません。 今まで面倒を見てくれているインストラクターはその人の技量や性格、癖などすべて知っています。 当然適切な機材を販売します。その人の安全を最優先に考えますからね。

いくつか例を挙げてみましたが、考えてみるとパラグライダーが危ないのではなく、人間の問題がパラグライダーにおいては危ない場面を作り出すのです。 ほとんどがこの人間が作り出す問題なのです。 自然を敬い、謙虚に、無理をしないで楽しむことがパラグライダーには必要なのです。

20年くらい前には、パラグライダーメーカーによる滑空性能開発競争の結果、安全性に欠けるようなグライダーも出回っていました。 しかし現在はパラグライダー機材、パラグライダーエリアといったハード面、パラグライダー協会による安全教育、パラグライダースクールの指導法 といったソフト面が充実しており、パラグライダーで飛ぶリスクは通常のスポーツと同じレベルと言えます。 スクールに入校し、適切な指導の下で適切な機材を使用し、適切な気象条件で練習すれば事故は起きないでしょう。 言わば、パラグライダーにおけるリスクは、パイロット一人一人の心の中に潜んでいるのです。

パラグライダーを始めよう!

パラグライダーを始めるには、自分の行くパラグライダースクールを選ぶところから始めると思いますが、初めてパラグライダーをする方にとって、スクールの良い悪いは判別がつきません。 選ぶ基準として自宅から近いところ、料金が安いところ、友人が通っているところ、あたりだと思います。 これらも大切だと思いますが、もっと大切なことがあります。

それは平日もやっているかどうかです。 平日もやっているということは、そのスクールのインストラクターは職業としてパラグライダーを教えていると言うことです。いわばパラグライダーのプロです。 土日しかやっていないということは、平日には別の仕事をしていることになります。 どうせなら本物のプロに教わりたいですよね。 ですから平日にもスクールをやっているかどうかは大きなポイントです。

土日しかやっていないところのほうが料金的には安かったりしますので(本職が他にあるため)安さだけでスクールを選ばない方が良いと思います。 あとは、インストラクターの資質とか、エリアの風とか、講習機材の良し悪しなどですから、初めての方には分かりません。ですから、まずは体験に行って自分の目でインストラクターを採点してみましょう。 そして「この先生に教わりたい」と思ったら入校しましょう。「どうもここでは不安」となれば、別のスクールを探しましょう。

無事に体験も終わり、無事にスクールに入校しました。 最初のコースは「マスターコース」「ベイシックコース」等の名前がつけられています。 このコースでは入校料金が3万円前後のスクールが多いと思います。 毎回必要な安全管理費などもチエックしておきましょう。 そして有効期限が入校より3ヶ月または6ヶ月と期限が設けられています。 

有効期限を過ぎるとまたお金を払うことになりますので、期限内に卒業したいものです。 大切なことは、入校したら毎週通う事です。間があくと気持ちが薄れます。 上手くなりたかったら毎週通いましょう。仲間を作って一緒に楽しむのも良い方法です。 このコースでは機材はスクールでレンタルしてくれると思います。いきなり買う必要はありませんが、続けたいと思っている方は、はじめから自分の機材で練習したほうが良い結果が出るでしょう。 パラグライダーの機体というものは、メーカーや大きさなどによって操作性が変わってきます。 はじめから自分の機材で練習することは早く自分の機材に慣れることができ、早く高いところから飛べるということに繋がるのです。

めでたく最初のコースを卒業したら次は「パイロットコース」です。 スクールによっては「パイロット1」「パイロット2」と分かれているところもあります。 それぞれコースに入校するときに講習料金3万円前後を支払います。有効期限もあります。 ここまでは最初のコースと一緒ですが、大きく違うところがあります。 それは今までのコースは「体験の延長」程度であるのに対し、ここからは本格的にパラグライダーを続けて、「自分の意思でパイロットになる」ということです。 第三者賠償責任保険、傷害保険等に加入し、自分の責任において飛行練習を行うことになります。 (もちろんインストラクターが手取り足取り教えます) 自分の機材でないと講習は受けられません。よってスクールで機材を購入します。 そのスクール以外で購入した物は受け付けない場合もあるので確認したほうが良いでしょう。 

中古も斡旋しているスクールもありますが、良い中古はなかなか無いのでできれば新品が良いでしょう。 すべてセットで購入して50万円から60万円程度必要です。これを高いというか安いというかは人それぞれの判断になりますが、趣味のものですので安い高いの基準は無いです。 続けていけば、数年後にまた新しいグライダーを買うことになるので、お金を貯めておきましょう。

パイロットコースは本格的です。 離陸着陸の正確性はもちろん、上昇気流を利用した長時間フライト、緊急時の降下手段なども教わります。 そういったパラグライダーの技術も大切なのですが、一番大切なのは「安全に対する判断力」です。 それはどういうことかと言えば、「飛行中こんな場面に遭遇したら、どのような行動を取りますか?」 という問いに対し、実際の飛行中にそれぞれの場面で適切に判断し行動に移せるということです。

こればかりは数をこなさないと身に付きません。よって卒業までには2年くらいはかかります。(フライト100本以上) 半年ほどで卒業させるスクールや、フライト60本ほどで卒業させるスクールがありますが、ちょっと疑問符が付きます。 その後にまたスクールに残り、「エキスパートコース」などに入校する場合は良いでしょう。 しかし半年ほどで「あなたは一人前です。合格です。」といって卒業してしまった場合は不安が残るのでは? もしあなたが思ったより早く卒業してしまったら、スクールに残り、もっと教えてもらいましょう。 この世界は終わりは無いのですから。

パラグライダースクールの門をたたいてから2年、若しくは3年。 めでたくパイロットコースを卒業したならば、あなたは一人前のパイロットとして認められます。 しかし、車で言えば若葉マークのパイロットです。まだまだ初心者ということを忘れずに安全にフライトしましょう。

スクールを卒業したらどうするのか?ほとんどの方はその教わった人の下で飛び続けます。 本来、パラグライダーに卒業はありません。飛ぶにあたっては常に勉強なのです。 これでいい、ということは無いのです。ずっと自分の決めた師匠の下で飛ぶのが良いのではないでしょうか。 たまには、スクール内で気のあった仲間同士でツアーに行くのも良いでしょう。一人では行けませんからね。 詳しい先輩フライヤーについていくのが一番です。他のエリアを飛ぶことは楽しみでもあり、勉強です。 より空の世界が広がります。

さあ、このシリーズも最終回、ここまで読んでくれたあなたの頭の中は、すでにパラグライダーの事でいっぱいになっている事でしょう。

今やパラグライダーの映像はネットで見れる時代だし、ビデオも色々出ています。 しかし、実際にやってみるのと映像を見るのとでは天と地ほどの差があります。 「飛ぶってどんな感じ?」と聞かれても誰も口では説明ができないのです。やってみるしかないのです。 行動しなければ何も実現しません。飛んでみたいと思っているだけでは駄目なのです。

早速パラグライダースクールに電話して、次の休みの日に出かけて見ましょう。 一日目が雨で飛べなくても、必ず次の休みもパラグライダーを予定に入れておきましょう。 一日では天候の具合で飛べないこともあるからです。それでも飛べなかったら次の休みも出かけましょう。 パラグライダーとはそういうものなのです。せっかく出かけても飛べたり飛べなかったりします。 ですから、飛べるということは貴重なことだし、素晴らしいことなのです。

スクールに通い始めたら、数年後に自由に空を飛んでいる自分の姿を想像し、あきらめずにコツコツ通ってみましょう。必ずその姿は現実のものとなるでしょう。

トップフィールドパラグライダースクール群馬
校長 上野 亨

普段はインストラクターなので、タンデムグライダーに乗り指導をしているが、冬場の台湾ツアーでは、自身のトレーニングフライトも行う。これは2013年1月の台湾にて、海抜1,800Mからのワンショット。

車いすフライト